病気と健康の話

【メタボ】心臓・腎臓・代謝をまとめて守る― 心血管・腎・代謝(CKM)予防の最新エビデンス

コラムの要点

  • 心臓病・腎臓病・代謝(肥満/糖尿病/脂質異常など)は、互いに悪影響を与え合う、“連鎖”として起こりやすいことがわかっています。
  • その連鎖を「0〜4のステージ」で整理する新しい枠組みがCKM(Cardiovascular–Kidney–Metabolic)症候群/CKMの健康です。AHA(米国心臓協会)が2023年に提唱しました。
  • 添付論文(システマティックレビュー&メタ解析)では、CKMステージが進むほど死亡リスクが段階的に増えることが定量的に示されています。
  • “症状がない”早い段階(ステージ1〜2)から、心臓・腎臓・代謝をまとめて整えることが、将来の重症化予防の鍵になります。

■まず知っておきたい:CKMの「ステージ0〜4」とは?

CKMは「心臓(血管)」「腎臓」「代謝」を別々に見るのではなく、リスク因子〜臓器障害〜病気の確定までを、連続したステージでとらえる考え方です。AHAの枠組みに基づき、研究では概ね次のように定義されています。

ステージ0CKMの主なリスク因子がない(例:高血圧などがない)
ステージ1過剰/機能不全の脂肪(いわゆる“肥満の質・量”が問題になり始める段階)
ステージ2追加の代謝リスク因子(血糖・血圧・脂質など)や、中等度〜高リスクのCKD(慢性腎臓病)がある
ステージ3非常に高リスクのCKD、または「10年心血管リスクが高い」などの“リスク同等”
ステージ4心血管疾患が確定(例:冠動脈疾患など)

ステージを明らかにすることで、まだ病気が確定していない人でも将来リスクを見える化できます。

①CKMステージが進むほど「死亡リスク」は段階的に上がる

CKMステージ(0〜4)と死亡リスクの関係を、複数研究の結果を統合して評価したシステマティックレビュー&メタ解析を紹介します。検索は複数データベースで行われ、最終的に9つのコホート研究・約1,033万人が解析対象になりました。

結論は明確で、CKMステージが上がるほど、全死亡・心血管死亡・冠動脈疾患死亡・脳卒中死亡が“段階的(dose–response)”に増えることが示されています。特にステージ4(心血管疾患が確定している段階)では、ステージ0に比べて、

全死亡HR 3.82(95%CI 2.24–6.52)
心血管死亡HR 6.38(95%CI 5.22–7.80)
冠動脈疾患死亡HR 9.19(95%CI 6.93–12.20)
脳卒中死亡HR 5.48(95%CI 4.28–7.02)

と、非常に大きな差がありました。

さらに重要なのは「重症(ステージ4)だけが危ない」のではなく、ステージ2や3の時点から、全死亡リスクが有意に上がっている点です。論文では、ステージ0に比べて、

ステージ2全死亡 HR 1.40(95%CI 1.15–1.70)
ステージ3全死亡 HR 2.91(95%CI 1.74–4.89)
ステージ4全死亡 HR 3.82(95%CI 2.24–6.52)

という“階段状の上昇”が示されています。

つまり、「まだ心臓病ではない」「腎不全ではない」人でも、代謝リスクや腎リスクが重なるだけで、将来の死亡リスクが押し上がる可能性がある、ということです。この論文はまた、「なぜ研究によって結果が違うのか」を解析し、年齢と教育水準(学歴)が結果に影響する“効果修飾因子”になり得ることを示しています。

加えて性差について、全死亡はCKM各段階で女性が一貫して高い傾向、心血管死亡は早期段階で女性が高い一方、後期段階で男性が高い傾向が示され、「同じステージでも性別でリスクの現れ方が異なる可能性」が示唆されています。

要するに、CKMは「概念」ではなく、実際に“生命予後(死亡)”と結びつく指標であり、しかも早い段階から差が出うる――これが最大のメッセージです。

②【心臓を大事に】CKMで“心血管死亡”はここまで増える:早期からの一体管理が鍵

心臓は、血液を全身へ送り出すポンプであり、同時に血管(動脈硬化)や血圧の影響を強く受けます。CKMの視点で大切なのは、心臓の病気(狭心症・心筋梗塞・心不全・脳卒中など)が、代謝の乱れ(肥満・糖代謝・脂質)や腎機能の低下と“別々に起こる”のではなく、同時進行しやすい点です。AHAはこの“多臓器連関”を臨床で扱いやすい形として、CKM健康の定義・ステージング・予測・包括的ケアの考え方を示しました。

添付論文のメタ解析では、CKMステージが上がるほど心血管死亡が増え、ステージ0に比べて、

ステージ1心血管死亡 HR 1.15(95%CI 1.01–1.31)
ステージ2HR 2.13(95%CI 1.54–2.94)
ステージ3HR 4.05(95%CI 2.87–5.72)
ステージ4HR 6.38(95%CI 5.22–7.80)

と、段階的な上昇が示されています。
「ステージ2(代謝リスクが揃う/CKDが中等度以上)で、すでに心血管死亡が約2倍」というのは、一般の方にとって非常に重要な示唆です。なぜなら、ステージ2は健診でよく見つかる(血圧・血糖・脂質・腎機能などの“生活習慣病”領域)からです。

さらに米国の全国代表データ(NHANES)を用いた研究では、CKMステージごとの心血管死亡の“絶対リスク”も評価され、15年の心血管死亡累積発生率がステージ0で5.5%、ステージ1で5.7%、ステージ2で7.9%、ステージ3で8.7%、ステージ4で15.2%と報告されています。
この結果が示す重要点は2つあります。
1つ目は、ステージ1はステージ0とリスクが近く、まさに「予防の勝負どころ」になり得ること。研究でも「ステージ0と1のリスクは近い」ことが示唆され、ここで介入できればステージ2以降への進行を抑えられる可能性があります。
2つ目は、ステージ4に入ると絶対リスクが大きく上がり、“心臓の病気が確定する前”に、代謝と腎臓を含めて立て直す価値が大きいことです。

また、米国ではCKMステージ1以上が約9割、ステージ3〜4(進行/高リスク)が約15%という報告もあり、CKMは“特別な人の話”ではありません。
心臓を守るために重要なのは、「心臓だけ」を見て血圧やコレステロールを扱うのではなく、腎機能(eGFRや尿アルブミン)と代謝(体重・血糖・脂質)を同時に整えることです。実際、CKMの流れを踏まえた予測式(PREVENT)では、腎指標(eGFRやアルブミン尿)も変数として組み込まれる方向が示されています。

③【腎臓を大事に】腎機能は“静かに”心血管リスクを増幅する:eGFRと尿アルブミンが要

腎臓は、血液をろ過して体内の水分・塩分・老廃物のバランスを保つ臓器です。しかし腎臓の怖いところは、かなり悪化するまで症状が出にくい点にあります。そのため、「自覚症状がない=問題ない」と思われがちですが、CKMの視点では、腎臓は“心臓リスクを静かに押し上げる装置”になり得ます。
AHAのCKMステージングでは、ステージ2に「中等度〜高リスクのCKD」が含まれ、ステージ3には「非常に高リスクのCKD」が含まれます。つまり腎機能低下は、早い段階からCKMの中核です。

添付論文のメタ解析でも、ステージ2(代謝リスク/CKDが揃う)から全死亡が有意に上がり、ステージ3・4でさらに上がる“階段状”の関係が示されています。

また欧州(UK Biobank、約40万人)を用いた前向き研究でも、CKMが進むほど死亡リスクが上がることが示されました。特にこの研究では、データの制約に合わせつつも、ステージ3を「非常に高リスクCKD(KDIGO基準)やPREVENT高リスク」によって定義し、ステージ2およびステージ3–4が全死亡・心血管死亡と関連することを示しています。
例えば全死亡について、ステージ1はステージ0と有意差が小さい一方で、ステージ2、ステージ3–4でリスクが上昇しています(男女別解析でも同様の方向性)。
この「ステージ1は差が小さいが、ステージ2から差が出る」という構造は、添付論文や米国NHANES研究の結果とも整合的で、“腎臓が絡み始める段階(ステージ2〜)が転換点”になり得ることを示します。

では腎臓を守るために、何を指標にすればよいのでしょうか。ここで鍵になるのが、国際ガイドライン(KDIGO 2024)でも中心に据えられている、

eGFR(推算糸球体濾過量)腎臓の“ろ過能力”
アルブミン尿
(尿アルブミン/クレアチニン比:ACRなど)
腎臓の“傷つきやすさ/漏れ”

です。KDIGOはCKDの評価・管理に関する包括的指針を2024年に更新しています。

さらに近年は、「代謝への介入が腎臓と心臓の両方に効く」エビデンスも拡大しています。例えば2型糖尿病+CKD患者を対象としたFLOW試験では、セマグルチドが腎アウトカムや心血管死を含む転帰のリスクを低下させたことが報告されています。
もちろん、薬物療法の適応は個別で、すべての方に当てはまるわけではありません。しかし、CKMの視点で腎機能を継続的に把握し、血圧・血糖・体重などをセットで整えることが、心臓と腎臓の“同時防衛”につながることは、複数の研究が裏づけています。

④【代謝を大事に】“体重・血糖・脂質・血圧”が心腎の土台:ステージ1が「今すぐの予防点」

「代謝」と聞くと、“糖尿病だけ”を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかしCKMでいう代謝は、より広く、肥満(脂肪の量・質)・血糖・血圧・脂質などが絡み合った状態を指します。AHAのCKMでは、ステージ1が「過剰/機能不全の脂肪」、ステージ2が「追加の代謝リスク因子やCKD」とされ、まさに代謝がCKMの出発点になりやすい構造です。

この“出発点が多い”ことは疫学データにも現れています。米国NHANESを用いたJAMAの報告では、2011〜2020年の推定で、CKMステージ0は約10.6%に対し、ステージ1が約25.9%、ステージ2が約49.0%と、半数近くがステージ2に該当しています。
つまり多くの人が、「心臓病が確定する前」に、すでに代謝リスク(+腎リスク)を複数抱えている可能性がある、ということです。ここで重要なのは、代謝の乱れは“心臓と腎臓の共通の燃料”になり得る点です。脂肪組織の機能不全から、炎症・酸化ストレス・インスリン抵抗性・血管機能障害が進み、代謝リスク→腎機能悪化→心血管イベント、という“多方向の連鎖”が強調されています。

添付論文でも、ステージ2から全死亡が有意に上がり、ステージ3・4でさらに上がることが示されました。

一方で、米国NHANESの解析では「ステージ0と1の心血管死亡リスクは近い」ことが示唆され、ステージ1は“まだ戻れる(進行を止められる)可能性が高い地点”と捉えられます。
さらに欧州UK Biobankでも、ステージ1はステージ0と全死亡リスクの差が小さい一方、ステージ2やステージ3–4でリスクが上がるパターンが示されています。

そして近年、代謝への介入が心血管転帰を改善することを示す強いエビデンスも出ています。例えばSELECT試験(肥満/過体重で心血管疾患既往があり、糖尿病のない人を含む)では、セマグルチド群で主要心血管イベントが減少し、ハザード比は0.80(95%CI 0.72–0.90)でした。
もちろん、薬は万能ではなく、生活習慣や合併症、費用、副作用、適応などを総合して判断する必要があります。ただ、ここで大事なのは「代謝を整える=体重だけの話」ではなく、心臓と腎臓を同時に守る“上流対策”になり得る、という点です。

■FAQ(よくある質問)

Q1. CKM症候群って何ですか?メタボとどう違うの?

CKMはAHAが提唱した枠組みで、肥満や代謝リスクだけでなく、腎臓(CKD)や心血管疾患(CVD)まで含めて0〜4のステージで整理します。
添付論文のメタ解析では、CKMステージが進むほど全死亡・心血管死亡などが段階的に増えることが示され、“概念”ではなく“予後と結びつく指標”であることが示されています。

Q2. 自分がどのCKMステージかは、どうやって分かりますか?

研究では、体格(BMI等)、血圧、血糖、脂質、腎機能(CKDリスク)、心血管疾患の既往などを用いてステージ判定します。
腎機能の評価はeGFRやアルブミン尿(ACRなど)が重要で、KDIGO 2024でもCKDの評価・管理が包括的に示されています。

Q3. ステージ1(脂肪が多い/質が悪い)でも、すぐ危険ですか?

複数研究で、ステージ0とステージ1の死亡リスク差は小さい/近い可能性が示されています(例:米国NHANES研究、欧州UK Biobank研究)。
ただしステージ1は、ステージ2(代謝リスクやCKDが加わる段階)へ進む“入口”になり得るため、ここで生活習慣やリスク因子を整える意義が大きいと考えられます。

Q4. 腎臓が悪いと、なぜ心臓のリスクが上がるの?

CKDは心血管リスクと密接に関連し、CKMの枠組みでも腎指標(eGFR・アルブミン尿)がリスク予測に組み込まれる方向性が示されています。
添付論文でも、ステージが進むほど心血管死亡が段階的に増えることが示されています。
腎臓は症状が出にくい一方で、早期から“全身リスク”の一部として評価することが重要です(KDIGO 2024)。

Q5. 体重を減らすことは、本当に心臓や腎臓に良いの?

薬物介入を含む厳密な試験として、SELECT試験ではセマグルチドにより主要心血管イベントが減少(HR 0.80)しました。
またFLOW試験では、2型糖尿病+CKDの患者で、セマグルチドが腎アウトカムや心血管死に関わる転帰を改善したことが報告されています。
ただし治療の選択は、年齢・既往・腎機能・副作用リスクなどで変わるため、医療機関で個別に評価しながら進めることが大切です。

参考文献

  • Ding H, Jiang L, Zhao Y, Lee D, Chun B. Associations between cardiovascular-kidney-metabolic syndrome staging and risks of all-cause and cardiovascular mortality: a systematic review and meta-analysis. American Journal of Preventive Cardiology. 2026;25:101407. doi:10.1016/j.ajpc.2026.101407.
  • Ndumele CE, Rangaswami J, Chow SL, et al; American Heart Association. Cardiovascular-Kidney-Metabolic Health: A Presidential Advisory From the American Heart Association. Circulation. 2023;148(20):1606-1635. doi:10.1161/CIR.0000000000001184.
  • Aggarwal R, Ostrominski JW, Vaduganathan M. Prevalence of Cardiovascular-Kidney-Metabolic Syndrome Stages in US Adults, 2011-2020. JAMA. 2024;331(21):1858-1860. doi:10.1001/jama.2024.6892.
  • Claudel SE, Schmidt IM, Waikar SS, Verma A. Cumulative Incidence of Mortality Associated with Cardiovascular-Kidney-Metabolic (CKM) Syndrome. J Am Soc Nephrol. 2025;36(7):1343-1351. doi:10.1681/ASN.0000000637.
  • Ji H, Sabanayagam C, Matsushita K, et al. Sex Differences in Cardiovascular-Kidney-Metabolic Syndrome: 30-Year US Trends and Mortality Risks—Brief Report. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2025;45(1):157-161. doi:10.1161/ATVBAHA.124.321629.
  • Mayne KJ, Walker H, Elyan BMP, et al. Cardiovascular–kidney–metabolic syndrome and mortality in a prospective UK cohort study. Eur J Prev Cardiol. 2025;zwaf514. doi:10.1093/eurjpc/zwaf514.
  • Massy ZA, Drueke TB. Combination of Cardiovascular, Kidney, and Metabolic Diseases in a Syndrome Named Cardiovascular-Kidney-Metabolic, With New Risk Prediction Equations. Kidney Int Rep. 2024;9(9):2608-2618. doi:10.1016/j.ekir.2024.05.033.
  • Lincoff AM, Brown-Frandsen K, Colhoun HM, et al; SELECT Trial Investigators. Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Obesity without Diabetes. N Engl J Med. 2023;389(24):2221-2232. doi:10.1056/NEJMoa2307563.
  • Perkovic V, Tuttle KR, Rossing P, et al; FLOW Trial Committees and Investigators. Effects of Semaglutide on Chronic Kidney Disease in Patients with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2024;391(2):109-121. doi:10.1056/NEJMoa2403347.
  • Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) CKD Work Group. KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney Int. 2024;105(4S):S117-S314. doi:10.1016/j.kint.2023.10.018.

記事監修者田場 隆介

医療法人社団 青山会 まんかいメディカルクリニック 理事長

医療法人社団青山会代表。兵庫県三田市生まれ、三田小学校、三田学園中学校・同高等学校卒業。 1997(平成9)年岩手医科大学医学部卒業、町医者。聖路加国際病院、淀川キリスト教病院、日本赤十字社医療センター、神戸市立医療センター中央市民病院を経て、2009(平成21)年医療法人社団青山会を継承。 2025年問題の主な舞台である地方の小都市で、少子高齢化時代の主役である子どもと高齢者のケアに取り組んでいる。

お知らせ一覧へ戻る