生活習慣病についてLifestyle diseases

さまざまな生活習慣病

1.高血圧

高血圧と診断される数値は、外来時の測定で最高血圧が140mmHg以上、最低血圧が90mmHg以上の場合です。
しかし、2019年ガイドラインが改訂され、これまでの140/90mmHgから130/80mmHg未満に引き下げられました。(75歳以上の高齢者におきましては、従来通り140/90mmHg)高血圧の基準は年々厳しくなる傾向にあります。

血圧の高い状態が続くと血管壁が圧力によるダメージを常に受け続けることになります。これにより血管壁が厚くなったり、硬くなったりすることで動脈硬化の原因となり、さらに狭心症や心筋梗塞、脳卒中、腎臓病などの疾患も起こしやすくなるのです。
高血圧の治療で最も優先されるべきは禁煙です。たとえ節煙しても、喫煙行動が残ったままでは内服薬の効果が十分ではありません。 次に適正体重の維持です。

肥満、特に飲酒習慣も伴うと心臓の負担につながり血圧が下がりにくい状態になります。食事療法と食後すぐの運動で適正な体重(BMI: 22-23)に戻しましょう。行動療法で改善効果がみられない場合は、薬物療法も併用します。ひとつの薬で血圧が十分に下がらない場合は、複数の薬を組み合わせて治療します。

2.糖尿病

糖尿病は地球規模の脅威です。全世界において過去30年で4倍に急増。喫煙・加齢・男性・肥満・運動不足・加工肉の過剰摂取・飲酒など共通のリスク因子をもつ、「がん」の増加と連動しています。

一方で、本人には自覚症状のないことが多く、健康診断や皮膚の感染症などで検査の際に数値で診断されます。自覚症状もないその日から、当事者が自ら主体的に行動を変えなければ薬だけではどうにもなりません。そこが他の病気と違うところです。

糖尿病の診断は、主に血糖値とHbA1cの値で判断されます。
空腹時血糖≥126mg/dL、HbA1c≥6.5 %で糖尿病とされますが、特定健診で保健指導の対象となる方(空腹時血糖100〜109mg/dL、HbA1c5.7〜6.4 %)であっても、境界を持たずに糖尿病と連続した病態を形成しています。飲食で血糖値は上昇しますが、インスリンの機能が正常であれば血糖値は速やかに元に戻ります。しかし、加齢などでインスリンの分泌量が低下したり、あるいはインスリンが分泌されているにもかかわらず、運動不足などでインスリンに対する作用が鈍くなり効きにくくなると、血糖値が常時高い状態が続き、糖尿病となります。

3.脂質異常症

治療目的は、冠動脈疾患、脳卒中、抹消動脈疾患など、動脈硬化性疾患を予防することになります。検査項目はLDL(悪玉コレステロール)、HDL(善玉コレステロール)、TG(中性脂肪)、T-Chol(総コレステロール)です。大事なのはLDL(悪玉コレステロール)で、LDLが40mg/dL下がると、全死亡率が12%下がるとされます。

アメリカではLDL値を下げられるだけ下げた方が良いとされていますが、日本ではリスク因子をスコア化し目標値が設定されています。治療はスタチンで、日本人においても冠動脈疾患を33%減少させることが証明されています。スタチンは、妊娠している時や肝疾患がある時は使用できません。副反応は筋障害で、脚が攣ったり全身がだるくなったりすることがあります。効果が不十分な時はエゼチミブを併用します。

一般に中性脂肪を薬で下げても心血管疾患のリスクを下げられないとされていますが、最近は新血管死亡率を下げる可能性があるという報告もあります。また、極端に中性脂肪が高い場合には急性膵炎に注意する必要があります。

4.高尿酸血症

悪者にされがちな尿酸ですが、古くから抗酸化作用があると言われています。哺乳類が樹上から地上へ降りたことで果実などのビタミン摂取が減り、尿酸を抗酸化物質として使うようになったようです。したがって、運動や精神的ストレスでも尿酸値は上がリます。

ただし、高すぎるのは注意が必要で、血圧・耐糖能異常・慢性腎臓病・心臓病・脳卒中との関連が示されており血清尿酸値が9.0mg/dL以上であれば生活習慣への介入とともに薬物治療開始します。8.0〜9.0 mg/dLの場合は、慢性腎臓病・尿路結石・高血圧・心疾患・糖尿・メタボリックシンドロームのいずれかがあれば薬物治療を行います。

5.肥満症

肥満の判定には体重(kg)/身長(m)2で算出されるBMIを用い、BMI≥25を肥満とされます。でも、肥満のみで直ちに治療の対象となるわけではありません。 BMI≥25で、糖尿・脂質異常症・高血圧・高尿酸血症・脂肪肝・変形性膝関節症・睡眠時無呼吸症候群などを有した場合、または、内臓脂肪≥100㎠の時に肥満症と診断し治療が必要です。

治療は食事療法が基盤であり摂取エネルギーの制限が原則です。食事療法に加え、有酸素運動と抵抗運動の両方をバランスよく毎日行い、内臓脂肪の減少と心肺機能向上、筋量・身体機能の維持を目指します。