肺炎
「どうせただの風邪だろう」と咳を放置していませんか?その自己判断は、「肺炎」のサインを見逃す原因になっているかもしれません。肺炎は世界的に見ても入院や死亡の主な原因となる病気であり、特に高齢者では「なんとなく元気がない」といった見過ごされやすい症状で現れるため、注意が必要です。
ここでは、風邪と肺炎を見分けるためのセルフチェックから、原因となる細菌やウイルス、予防法までを解説します。
■肺炎かもしれない症状と主な原因
長引く咳、色のついた痰、胸の痛みや息苦しさ
肺炎になると、体はさまざまなサインを出します。 これらは、肺の中で病原体が増え、体の免疫が戦っている証拠です。
激しく長引く咳 | 風邪の咳は数日で軽くなることが多いですが、肺炎の咳はしつこく続く傾向があります。「マイコプラズマ肺炎」などでは、痰の少ないコンコンという乾いた咳が1ヶ月以上続くこともあります。 |
色のついた痰(たん) | 痰は体の中のお掃除役です。肺炎の場合、病原体と戦った白血球などの死骸が混じるため、黄色や緑色、時には鉄がさびたような色の痰が出ます。これは肺の中で激しい戦いが起きているサインです。 |
胸の痛み | 深呼吸をしたり、咳をしたりした時に胸が「ズキン」と痛むことがあります。これは、肺を包んでいる「胸膜(きょうまく)」という薄い膜にまで炎症が広がっているサインかもしれません。 |
息苦しさや息切れ | 肺は、私たちが生きるための酸素を取り込む重要な臓器です。肺炎で炎症が起きると、肺が硬くなったり水が溜まったりして、酸素をうまく取り込めなくなり、息苦しさを感じます。普段は平気な階段の上り下りなどで息が切れるのは危険な兆候です。 |
これらの症状は、体が助けを求めているサインです。 一つでも当てはまる場合は、自己判断せずに医療機関を受診してください。
風邪や気管支炎との見分け方とセルフチェック項目
「この症状は風邪?肺炎?」と迷うのは当然です。
肺炎は風邪と比べて症状が重く、治療も異なります。 見分けるポイントは、炎症が起きている「場所」です。
項目 | 風邪 | 気管支炎 | 肺炎 |
---|---|---|---|
主な炎症の場所 | 鼻やのど(上気道) | 空気のとおり道(気管支) | 酸素を取り込む袋(肺胞) |
熱 | 微熱が多い | 38℃前後のことも | 38℃以上の熱が続くことが多い |
咳 | 比較的軽い | 激しい咳が多い | 長引くことが多い |
痰の色 | 透明や白 | 透明・白色・黄色 | 黄色、緑色、さび色など |
息苦しさ | ほとんどない | 時に感じる | 感じることが多い |
全身の症状 | 比較的軽い | 倦怠感など | 強い倦怠感、悪寒、筋肉痛など |
客観的にご自身の状態を把握するために、以下の項目を確認してみましょう。
【もしかして肺炎?セルフチェックリスト】
- 38℃以上の熱が3日以上続いている
- 黄色や緑色、さび色のついた痰が出る
- 息を吸ったり咳をしたりすると胸が痛む
- 少し動いただけですぐに息が切れる
- 体がガタガタ震えるような強い寒気がある
- 食欲がなく、体全体がぐったりして動けない
これら複数の項目が当てはまる場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
【要注意】高齢者に見られる食欲不振や元気のなさなどの非定型症状
若い方では咳や高熱といった典型的な症状が出やすい肺炎ですが、 ご高齢の方の場合は、まったく違う形で現れることがあるため注意が必要です。年齢を重ねると免疫の働きが変化し、はっきりとした症状が出にくくなります。 これを「非定型症状」と呼び、見逃されやすい危険なサインです。
【ご家族が気づきたい!高齢者の肺炎のサイン】
- なんとなく元気がない、ぼーっとしている
- 食欲が急になくなった
- 会話がかみ合わない、反応がにぶい
- トイレを失敗するようになった
- ふらついてうまく歩けない
このように、咳や熱がなくても「いつもと何か違う」という感覚が、 病気を発見する重要なきっかけになります。
特に注意が必要なのが、食べ物や唾液が誤って気管に入り込むことで起こる 「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」です。 高齢化が進む日本では、この誤嚥性肺炎で亡くなる方が増えており、 その多くがはっきりした症状を示さないことが知られています。
ご高齢の方の「なんとなくの不調」は、体が発する限界のサインかもしれません。見過ごさずに、かかりつけ医に相談することが命を守ることにつながります。
■主な原因となる肺炎球菌やインフルエンザなどの細菌・ウイルス
肺炎は、さまざまな種類の細菌やウイルスが肺に感染して起こります。 原因によって治療法が異なるため、どんな病原体があるかを知っておきましょう。
細菌による肺炎 | 最も多い原因は「肺炎球菌」という細菌です。このほか、「インフルエンザ菌(ウイルスとは別物です)」なども原因となります。高熱や色のついた痰が出やすいのが特徴で、治療には抗菌薬(抗生物質)が使われます。 |
ウイルスによる肺炎 | インフルエンザウイルスやRSウイルスが代表的です。近年では、新型コロナウイルスによる肺炎も世界的な問題となりました。ウイルスが原因の場合、抗菌薬は効きません。 |
非定型肺炎 | 「マイコプラズマ」といった、細菌とウイルスの中間のような性質を持つ微生物が原因です。比較的若い世代に多く、しつこい乾いた咳が長く続くのが特徴です。 |
原因を正確に突き止め、それに合わせた薬を選ぶことが治療の鍵となります。 自己判断で市販薬を飲み続けると、適切な治療の開始が遅れてしまうため危険です。
肺炎はうつる?主な感染経路と家族内での感染対策
「肺炎は家族にうつりますか?」という質問をよく受けます。 答えは「原因によって、うつるものとうつらないものがある」です。
うつる可能性のある肺炎 | インフルエンザウイルスやマイコプラズマなど、細菌やウイルスが原因の肺炎は、咳やくしゃみで飛び散る飛沫(ひまつ)によって周りの人に感染する可能性があります。 |
うつらない肺炎 | 高齢者に多い「誤嚥性肺炎」は、ご自身の口の中に普段からいる細菌が気管に入ることが原因です。そのため、このタイプの肺炎が人から人へうつることはありません。 |
原因がはっきりするまでは、うつる可能性を考えて行動することが大切です。ご家族に咳や熱の症状がある場合は、感染拡大を防ぐために以下の対策を徹底しましょう。
【家庭でできる感染対策5つのポイント】
手洗い・消毒 | 流水と石鹸での手洗い、アルコール消毒をこまめに行いましょう。ウイルスや細菌を洗い流す基本の対策です。 |
マスクの着用 | 咳をしている本人はもちろん、お世話をする家族もマスクを着用することで、飛沫の拡散と吸い込みを防ぎます。 |
こまめな換気 | 1〜2時間に1回、5分程度窓を開けて部屋の空気を入れ替えましょう。ウイルスや細菌の濃度を下げることができます。 |
タオルの共用を避ける | 洗面所やトイレで使うタオルは、個人ごとに分けましょう。湿ったタオルは細菌の温床になりやすいです。 |
十分な休養 | 看病する家族も免疫力が落ちないよう、しっかりと休息をとることが重要です。共倒れを防ぐことも大切な対策です。 |
正しい知識に基づく対策が、ご自身と家族を守る盾となります。
■肺炎の検査と治療における3つのポイント
「肺炎かもしれない」と不安に感じたり、医師から肺炎と診断されたりすると、これからどんな検査や治療が行われるのか、心配になるかもしれません。
しかし、検査や治療の流れをあらかじめ知っておくことで、少しでも安心して治療に臨むことができます。
ここでは、肺炎の診断から治療、そして療養までの流れで特に大切になるポイントを「診断」「治療」「療養」の3つのステップに分けて、わかりやすく解説します。
胸部X線(レントゲン)、CT検査、血液検査(CRP)による診断
肺炎の診断は、いくつかの検査を組み合わせて行われます。 肺の中で何が起きているのかを正確に把握し、最適な治療法を見つけるための大切なステップです。
胸部X線(レントゲン)検査
肺炎の診断でまず行われる基本の検査です。
肺に炎症が起きていると、その部分が「浸潤影(しんじゅんえい)」と呼ばれる白い影として写ります。この影の広がりや位置を見ることで、肺炎の重症度を判断する大切な材料になります。
胸部CT検査
レントゲン検査だけでは判断が難しい場合や、影の原因をより詳しく調べたいときに行われます。体を輪切りにしたような鮮明な画像が得られるため、レントゲンでは見つけにくい小さな病変や、「すりガラス様陰影」と呼ばれる淡い影も見つけることができます。
血液検査
体の中でどれくらいの炎症が起きているかを、客観的な数値で確認します。
白血球数 | 体の中をパトロールし、細菌と戦う細胞の数です。細菌による肺炎では増加することが多くあります。 |
CRP(C反応性蛋白) | 炎症が強いほど高くなる数値です。このCRPの値は、細菌による肺炎かどうかを判断する手がかりになるだけでなく、治療の効果が出ているかを判定する上でも役立ちます。WuSらの研究によれば、CRPが特に高い値を示す場合は、細菌が血液中に入り込む「敗血症」という重い状態になるリスクのサインの一つとも考えられています。敗血症は、市中肺炎の患者さんの約5.1%に起こる注意すべき合併症です。 |
これらの検査のほか、痰(たん)を調べて原因となっている細菌やウイルスを特定する「喀痰検査」や、インフルエンザウイルスなどを調べる「迅速検査」をあわせて行います。
抗菌薬(抗生物質)による薬物療法と入院の必要性
肺炎の治療の柱は、原因となっている病原体を退治する薬物療法です。 肺炎の原因で最も多いのは肺炎球菌などの細菌であり、その場合は「抗菌薬(抗生物質)」が使われます。
抗菌薬による治療
原因となる細菌が特定できれば、その細菌に最も効果的な抗菌薬を選んで治療します。しかし、検査結果が出るまでには数日かかるため、最初は最も可能性が高いと考えられる細菌に効く抗菌薬(経験的治療)から開始することが一般的です。
治療がうまくいくと、通常は2〜3日で熱が下がり始めます。最近の研究では、状態が安定すれば点滴から飲み薬に切り替えたり、治療期間を5〜7日間といった短期間にしたりすることが推奨されており、体への負担を減らす工夫がされています。
入院の必要性
肺炎と診断されても、すべての人が入院するわけではありません。軽症の場合は、自宅で安静にしながら飲み薬で治療することができます。 入院が必要かどうかは、以下のような点で総合的に判断されます。「CURB-65」といった世界的な肺炎基準(意識、脱水、呼吸、血圧、年齢などを評価)を参考にして、患者さんの状態に最も適した治療の場所(外来か入院か)を決定します。
入院を検討する主なケース
呼吸が非常に苦しい、または血液中の酸素濃度が低い |
意識の状態が良くない、呼びかけへの反応がにぶい |
血圧が低い、または脱水症状がある |
食事や水分が自分でとれない |
重い心臓病や腎臓病などの持病がある |
ご高齢である |
自宅での介護が難しい、一人暮らしで看病する人がいない |
市販の咳止めや解熱剤は飲んでもいい?受診するべき診療科
つらい咳や熱が出ると、まずは市販薬で対処しようと考えるかもしれません。 しかし、肺炎が疑われる場合には注意が必要です。
市販薬の自己判断での使用は慎重に
肺炎の咳は、肺の中の細菌やウイルスを体の外に排出しようとする大切な防御反応です。市販の強い咳止めで無理に咳を止めてしまうと、かえって病原体を肺の中に留めてしまい、治りを遅らせる可能性があります。また、解熱剤は一時的に熱を下げて体を楽にしますが、病気の原因そのものを治すわけではありません。高熱で体力の消耗が激しいときなどに一時的に使用するのは問題ありませんが、市販薬で様子を見ている間に肺炎が悪化してしまう危険性も考えられます。
受診すべき診療科
長引く咳や高熱、息苦しさなど、肺炎が疑われる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。
大人 | まずは「呼吸器内科」または「内科」を受診しましょう。 |
子ども | 「小児科」を受診してください。 |
【すぐに受診!危険なサインのチェックリスト】
以下の症状が複数当てはまる場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
- 38℃以上の熱が3日以上続いている
- 息が苦しい、少し動いただけでも息切れがする
- 息を吸ったり咳をしたりすると胸に痛みがある
- 黄色、緑色、鉄さび色のような色のついた痰が出る
- 唇や顔色が悪い(紫色っぽい)
- (特に高齢の方で)意識がはっきりしない、ぐったりしている
治療にかかる期間と仕事や学校を休むべき日数の目安
肺炎と診断されると、治療にどれくらいかかるのか、仕事や学校をどのくらい休まなければならないのか、気になる方も多いでしょう。
治療にかかる期間
治療期間は、肺炎の種類、重症度、年齢、もともとの健康状態によって大きく変わります。一般的な細菌性肺炎で、抗菌薬がよく効いた場合は、薬を飲み始めてから2〜3日で熱が下がり始め、症状も楽になってきます。
抗菌薬の投与期間は5〜7日間程度が一般的ですが、症状が良くなったからといって自己判断で薬をやめてはいけません。処方された薬は必ず医師の指示通りに最後まで飲み切ることが、再発や薬の効かない「耐性菌」の発生を防ぐために非常に重要です。なお、マイコプラズマ肺炎などの非定型肺炎の場合は、熱などの主な症状が治まった後も、しつこい咳だけが1ヶ月近く続くこともあります。
仕事や学校を休むべき日数
肺炎の療養で最も大切なのは「休養」です。
どのくらい休むべきかについては、明確な法律上の決まりはありませんが、以下の2つの観点から医師と相談して決めるのが基本です。
感染拡大を防ぐため | インフルエンザ肺炎やマイコプラズマ肺炎など、人にうつる可能性のある肺炎の場合は、熱が下がっても感染させるリスクが残っていることがあります。 |
体力を回復させるため | 肺炎になると、体は病原体と戦うために相当なエネルギーを消耗します。熱が下がってすぐに無理をすると、体力の回復が遅れたり、ぶり返してしまったりする可能性があります。 |
一般的には、「熱が下がり、咳や息苦しさなどのつらい症状が落ち着いて、普段通りの生活を送れるくらいに体力が回復するまで」が休養の目安となります。復帰のタイミングについては、必ず主治医に相談し、必要であれば診断書を書いてもらいましょう。
■肺炎を予防し再発を防ぐための対策
一度肺炎にかかると、治療が終わった後でも「また再発するのでは」と不安に思う方は少なくありません。 肺炎は、病原体と戦った後の体力が落ちている時にかかりやすい病気です。
しかし、日々の生活で少し意識を変えるだけで、肺炎のリスクは大きく減らせます。 大切なのは、病原体を体に入れない「外からの防御」と、病原体に負けない体を作る「内からの防御」です。 ここでは、肺炎の予防と再発防止のために今日からできる4つの対策をご紹介します。
肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの定期接種
肺炎を予防する上で、ワクチン接種は「体を守る鎧」のような非常に有効な手段です。 特に、肺炎の原因で最も多い細菌や、肺炎の引き金になりやすいウイルスに対するワクチンは、重症化を防ぐために重要です。
肺炎球菌ワクチン | 肺炎の原因菌で最も多い「肺炎球菌」による肺炎は、重症化しやすい特徴があります。このワクチンを接種することで、感染そのものを防いだり、万が一かかっても症状が重くなるのを防いだりする効果が期待できます。高齢者を対象とした定期接種の制度がありますので、対象となる方はぜひ接種を検討してください。 |
インフルエンザワクチン | インフルエンザにかかると、のどや気管の粘膜が傷つき、体の防御機能が弱まります。その隙に細菌が侵入し、二次的に肺炎を引き起こすことがよくあります。毎年インフルエンザワクチンを接種することは、インフルエンザの予防だけでなく、肺炎のリスクを減らすことにも直結します。 |
RSウイルスワクチン | 最近では、高齢者の肺炎予防を目的としたRSウイルスワクチンも利用できるようになりました。これらのワクチンは、肺炎の発生率を下げ、かかった際の経過を良くするために不可欠な予防策です。ご自身の状況に合わせて、どのワクチンを接種すべきか、かかりつけ医と相談して計画することが大切です。 |
免疫力を高めるための適切な栄養、運動、睡眠習慣
ワクチンという「外からの鎧」を固めたら、次は自分自身の体の抵抗力である「免疫力」を高めましょう。 免疫力は、体の中をパトロールして病原体と戦う「内なる軍隊」です。 この軍隊を強くするためには、日々の生活習慣がとても大切になります。
これらの健康的な生活習慣は、肺炎だけでなく、さまざまな病気の予防につながります。 日本の高齢化社会においては、こうした栄養面の改善やリハビリテーションの重要性が指摘されています。 治療後の体力回復期にも重要な役割を果たしますので、できることから少しずつ取り入れてみてください。
生活習慣 | 具体的なポイント |
栄養 | バランスの良い食事が基本です。特に、体を作るもとになるタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)や、のどや鼻の粘膜を強くするビタミンA(緑黄色野菜)、免疫細胞の働きを助けるビタミンC(果物、野菜)などを意識して摂りましょう。 |
運動 | 無理のない範囲での適度な運動を続けましょう。ウォーキングなどの軽い運動は血行を良くし、免疫細胞が体のすみずみまでパトロールしやすくなります。1日20~30分ほど、少し汗ばむくらいが目安です。 |
睡眠 | 質の良い睡眠を十分にとることは、免疫機能を正常に保つために不可欠です。睡眠中に体はダメージを修復し、免疫システムを整えます。寝る前のスマートフォンの使用を控えるなど、リラックスできる環境を整えましょう。 |
高齢者は特に重要!誤嚥性肺炎を防ぐ口腔ケアと食事の工夫
高齢者の方で特に注意が必要なのが、食べ物や唾液が誤って気管に入ってしまう「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」です。 これは、お口の中の細菌が唾液などと一緒に肺へ流れ込み、炎症を引き起こすことで起こります。 日本の超高齢化社会において、この誤嚥性肺炎は非常に大きな問題となっています。
そのため、誤嚥性肺炎の予防には、お口の中を清潔に保つことと、食事の仕方を工夫することが何よりも重要です。
口腔ケアで肺に侵入する細菌を減らす
お口の中の細菌の数を減らすことが、誤嚥性肺炎の直接的な予防になります。
- 毎食後と寝る前に、丁寧に歯を磨く
- 入れ歯は毎食後に取り外し、きれいに洗浄する
- 細菌の温床になりやすい舌の表面も、専用のブラシで優しく清掃する
- 定期的に歯科医院を受診し、専門的なクリーニングを受ける
食事の工夫で誤嚥そのものを防ぐ
食べる時の姿勢 | 少し前かがみになり、あごを軽く引いて食べることで、食道に食べ物が通りやすくなります。 |
食べ方 | 一口の量を少なくし、焦らずゆっくりとよく噛むことを心がけましょう。 |
食事の形態 | 水やお茶でむせやすい場合はとろみ剤を使ったり、食べにくいものは細かく刻んだりする工夫が有効です。 |
ご家族が食事のお手伝いをする際も、これらの点を意識することで、安全に食事を楽しんでいただくことができます。 口腔ケアと食事の工夫は、高齢者の肺炎予防の要となる大切な習慣です。
治療後の体力回復と後遺症を残さないためのリハビリテーション
肺炎で入院したり、長く安静にしていたりすると、全身の筋力や持久力は想像以上に低下します。 治療が終わっても、咳が続いたり、体力が完全に戻らなかったりすることも少なくありません。
肺炎後の体力をしっかりと回復させ、肺機能の低下などの後遺症を残さないためには、適切なリハビリテーションが重要です。 近年の研究では、肺炎にかかることが、心筋梗塞などの心臓の病気のリスクを高める可能性も指摘されています。 そのため、肺炎の治療が終わった後も、長期的な視点で健康を管理していくことが大切です。
【自宅でできる呼吸リハビリテーション】
口すぼめ呼吸 | 鼻からゆっくり息を吸い込み、ろうそくの火をそっと消すように口をすぼめて、吸う時よりも長く時間をかけて息を吐き出します。 この呼吸法は、息苦しさを和らげる効果があります。 |
腹式呼吸 | お腹に手を当て、息を吸う時にお腹を膨らませ、吐く時にゆっくりお腹をへこませることを意識します。呼吸を助ける横隔膜という筋肉を使い、効率的な呼吸を促します。 |
これらの呼吸練習に加えて、最初は短い時間の散歩から始めるなど、無理のない範囲で体を動かすことも体力回復につながります。ただし、リハビリは自己判断で無理に進めず、必ず主治医や理学療法士に相談しましょう。ご自身の状態に合った安全な方法で、焦らず、少しずつ社会復帰を目指していくことが大切です。
■まとめ
今回は、肺炎のサインから治療、そして日々の予防法までを解説しました。
「ただの風邪」と軽く考えがちなしつこい咳や色のついた痰も、実は肺炎を発症しているサインかもしれません。特に、ご高齢の方に見られる「なんとなく元気がない」といった「いつもと違う」変化は、見逃してはならない重要な兆候です。
ここで紹介した症状が複数認められれば、早めに呼吸器内科や内科、お子さまの場合は小児科を受診しましょう。
参考文献
- 日本呼吸器学会(JRS)肺炎診療ガイドライン2024
- Prina E, Ranzani OT, Torres A. Community-acquired pneumonia.
- Wu S, Chen L, Zhang X, Fan J, Tang F, Xiao D. Prevalence and risk factors for bacteremia in community-acquired pneumonia: A systematic review and meta-analysis