小児の風邪

■小児の風邪の基本と特徴

小児の風邪は、ウイルスによって引き起こされる上気道感染症であり、子どもが最も頻繁にかかる病気の一つです。年間を通じて発症しますが、特に秋から冬にかけて多くなります。主な症状は、鼻水、くしゃみ、咳、発熱、喉の痛みなどで、通常は数日から1週間程度で自然に回復します。乳幼児や基礎疾患のある子どもでは重症化することもあり、注意が必要です。ウイルスは主に飛沫感染や接触感染で広がるため、家庭内や保育施設での予防策が重要です。原因となるウイルスは200種以上あり、ウイルスの種類により症状の出方や合併症のリスクも異なります。風邪への正しい理解と対処が、子どもの健康を守る第一歩です。

■小児の風邪の主な症状

小児の風邪の症状は年齢や体力、ウイルスの種類によってさまざまですが、代表的な症状としては、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、喉の痛み、咳、発熱、食欲低下などが挙げられます。乳幼児では機嫌が悪くなったり、睡眠が浅くなることもあります。発熱は38~39℃程度まで上がることも多く、通常2~3日で下がりますが、3日以上続く場合は受診が勧められます。咳は初期には乾いた咳が多く、次第に痰を伴う湿った咳へ移行することが一般的です。また、ウイルスの種類によっては、下痢や嘔吐、発疹を伴うこともあります。症状の経過や変化を観察し、必要に応じて早めの医療機関受診が大切です。

■小児の風邪の原因ウイルスと流行時期

小児の風邪の原因となるウイルスは非常に多く、主にライノウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、ヒトメタニューモウイルスなどが知られています。ライノウイルスは春と秋に多く見られ、RSウイルスやインフルエンザは冬に流行のピークを迎えます。アデノウイルスは一年を通じて感染がみられますが、夏場に胃腸炎症状を伴う型も報告されています。これらのウイルスは主に飛沫感染および接触感染によって広がります。特に保育園や学校などの集団生活では感染しやすく、兄弟間や家族内での広がりも珍しくありません。感染対策として、手洗い・うがい・マスクの着用や、適切な室内換気が推奨されています。

■小児の風邪の家庭でのケア

風邪をひいた子どもに対しては、自宅でのケアが非常に重要です。まず、十分な休養と睡眠を確保することが回復への第一歩です。高熱や下痢・嘔吐がある場合には脱水に注意し、水分補給をこまめに行いましょう。乳幼児には母乳やミルク、幼児には経口補水液やスープ、麦茶などが適しています。また、鼻づまりには鼻吸引や加湿器の使用が効果的です。食事は無理に取らせず、おかゆやうどんなど消化の良いものを少量ずつ与えるようにしましょう。解熱剤や鎮咳薬などの市販薬の使用については、必ず医師の指示に従うことが大切です。特にアスピリンはインフルエンザや水痘と併用すると重篤な副作用を起こす可能性があるため、使用は避けましょう。

■小児の風邪と受診の目安

子どもの風邪は多くの場合、自然に回復しますが、重症化を避けるためには受診のタイミングが重要です。
以下のような症状がある場合は、小児科を受診してください。

  • 高熱が3日以上続く
  • 呼吸が速く、胸の陥没呼吸や喘鳴がある
  • 水分が摂れず、尿の回数が減っている
  • 意識が朦朧としている、ぐったりしている
  • けいれんを起こした
  • 嘔吐や下痢が続いている
  • 咳が1週間以上続く

また、乳児(特に生後6か月未満)では、軽い症状でも重症化する可能性があるため、早めの受診が望まれます。保護者としては「様子を見る」判断が難しい場合もありますが、「いつもと違う」と感じたら迷わず受診しましょう。

■合併症のリスクと予防

風邪は一般的に軽症ですが、特定のウイルス感染では重篤な合併症を引き起こすことがあります。たとえば、RSウイルス感染は細気管支炎や肺炎を、アデノウイルス感染は結膜炎や胃腸炎を、インフルエンザは脳症や二次性細菌感染を引き起こすリスクがあります。また、風邪に引き続いて中耳炎や副鼻腔炎を併発することもあります。これらの合併症を予防するためには、ワクチン接種が最も有効です。インフルエンザワクチンやヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、RSウイルスに対するパッシブ免疫製剤などの活用が推奨されています。感染予防のためには、家庭内での手洗い・マスク・換気の徹底も忘れずに行いましょう。

■参考文献

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